LPレコード時代


LPレコードというメディアが有った頃、30センチ盤で2000円でした。やや安いので1800円。ずっと後になって廉価版というLPが出始めたころにやっと1000円とか1200円という価格帯になりましたが、正規版はずっと2000円。高音質録音盤になると2200円とかいうのもありました。中学生/高校生の身にはちょっと高価な趣味でありました。我が家は裕福なほうではなかったのでお小遣いが少なくてなかなかレコードが買えなかった。それでもCapitol Recordから出ていたRoger Wagner Choraleの「黒人霊歌」は欲しかった。ヴィクターのコンソール・ステレオの写真を探していたら一枚私が聴いている時の写真が出てきた。

高校二年生の頃の写真でしょう、多分撮影者は母だったと思います

1965年か1966年の写真。当時は神戸の高校は全部「丸刈り」でした。これは嫌だったな。
高校受験の前、中学校の2学期の試験で私は「0点」を取りました。すでにTVの「N響アワー」を欠かさず聴いていたほどの音楽好き(しかもクラシック音楽ですぞ)なのに、音楽の試験が0点。2学期の通知簿は「2」。姉をはじめとして家族中が絶望のどん底に落ちました。もちろん、本人も。何故って、1ヶ月か2ヶ月するとすぐに「高校入試」という化け物が口を開けて待っているのですから。
でも本人に言わせるとレイテンの理由はちゃんとある。ようは音楽の授業内容が嫌いだったのであります。名曲の旋律を2~3小説書いて曲名を書かせる、和音を書いて「根音」は何かと問う、1度の和音を書けとか、そんな面白くもないわけのわからない授業ばっかりだったので何も聴いてなかったのでありまする。音楽は好きだったけど音楽授業は大嫌いだった、というわけ。で、「レイテン」。一番嫌いな「数学」でも0点は取ったことないのに。
強烈な思い出です。中学時代で一番落ち込んだですね。正月どころじゃなかった。
幸いにも1月・2月に集中勉強したおかげで3学期に落第点は取らずにすんだ。辛くも卒業。高校入試もヤマが当たってとりあえず楽々入学。私の人生で勉強にあれほど集中したのは高校受験前の2ヶ月間だけであります。あとは適当にやってたのでボロボロであります。
さて、私はその中学3年生の時に音楽の授業以外の場面で音楽に打ちのめされる経験をしました。1963年、中学の正規音楽教師(これが私にレイテン取らせた)の他にもう一人音楽家がいました。その先生は「保健」を教えてくれていました。この先生が音楽の先生だとは誰も知らなかった。ある3学期の保健の授業のとき彼曰く『きみら、歌って聞いたことあるか?』というのです。「そんなもん、なんぼでもありますよ」と皆口ぐちに返事。『ほな、クラシックの声楽はどうや?』『聴いたことないやろ』。そこで、みなシーン。だいたい、クラシックの声楽なんてはなから興味ないし。そしたらおもむろに先生が『もう3学期で皆ともお別れやからな、聴かせてやるわ』と言いながら教室の真ん中あたりで歌い始めたのであります。ピアノの伴奏などあるわけない。声だけ。『♪カァ~タリ~、カァ~タリ~、ペケ~メ、ディチスティ、パロ~ル、アモーレ、、、、』とうとうと、張りのある、テノールの歌声が教室中に響きました。中学生どもはその声を聴いて凍り付いてしまいました。クラシックなんて聴いたことないけど、その声の持つ迫力に皆顔色が変わったのです。もちろん私も直ぐそばで聴くテノールに目を見張りました。涙が出そうになった。(出たかも)人間の「声」というものにこれだけの「力」があるのだとは想像だにできなかった。人の声には力が有るのです。初めてその事に気がつかされた。天性の声帯に加えて充分に鍛錬された喉からは、信じられない「ミラクル・ボイス」が出てくるのです。歌い終わると教室は大拍手。なかには立って拍手してる生徒もいた。曲名はカンツォーネの「カタリ・カタリ(Catari, Catari)」。それで授業は終わり。『みんな、いい高校生になってくれよな』と言いながらその「保健」の先生は教室を後にしたのでありました。もしかしたらプロの働き口が無かったから代用教員をやっていたのかもしれないですが、詳しいことは分らずしまい。すでにお名前も忘れてしまいました。お顔は今でもしっかりと覚えています。背が低くて小太りの方でした。この時の授業は私にとって一生忘れられない授業であります。多分、この先生が正規の音楽教師であったなら、私はレイテンを取らなかったのではないかと、今も思うのです。高校に入学してコーラス部から勧誘があった時に、ふらふらと入部してしまったのですが、この時の経験がかなり影響しているのだろうなあ、と思います。私は今でもその先生に感謝しております。本当にいい授業をして下さった。
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LPレコード時代 への3件のフィードバック

  1. toyo より:

    今日は僕もクラシックファンですがLPレコードがステレオで1800円の時代は何時ごろから
    始まったですか?
    2000円になったのは何時ごろでしょう?ご存知ならば教えてください。

    chopin_toyo@yahoo.co.jp

    がメールアドレスです。

    • a6m3zero より:

      手持ちのLPレコードを調べてみました。1963年の「アラビアのロレンス」1800円、「北京の55日」2000円でした。一番古いレコードは中古で買ったArchivのBach「フーガの技法」で二枚組3600円、1956年の刻印があります。恐ろしや素うどん一杯25円の昭和31年に一枚当たり1800円だったんですね。私に買えるわけないですね。

      • toyo より:

        丁寧にコメントありがとうございました。僕も学生時代にはじめて買った
        レコードが吉田拓郎の「御伽草子」と言うアルバムでした。
        それでも苦労して買ったものでした。その後は目一杯中古を買い漁りました。
        おっしゃるように昭和40年前辺りのレコードに1800円と言う値段が付いています。
        でも、その境界線は良く分りません。お返事によると昭和38年頃ですかね。
        金持ちが一杯いたのですね。不思議な事?にその当時のレコードはとても
        綺麗でジャケット痛んでいないのが驚きです。
        ありがとうございました。

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