9/11 Commemoration(フォーレ・レクイエム)


素晴らしい演奏会でした。

私は今までフォーレの「レクイエム」をLPレコードの時代からCD録音の現在まで何種類も何度も聴いてきたのですが、自分で聖歌隊の一員として歌ってみて、初めてこの曲の奥深さを実感することが出来ました。名曲の名曲たる所以を思い知らされた貴重な経験となりました。「俺はいったい今までこの曲の何を聴いてきたのだろう」と思ったのでありました。

教会の大聖堂は満席。演奏の前に『今宵の演奏と祈りを2001年9月11日のテロ事件で亡くなった方々と残された遺族・友人に捧げます』というコメンテーターのアナウンスに続いて聴衆・演奏者全員で「祈りのことば」を朗読、「Too Often, God, Your Name is Used」という2001年のテロ後に作曲された象徴的な聖歌をこれも全員で歌ってから「レクイエム」に入りました。聴いている方も「祈り」なのです。

しわぶきひとつ聞こえない静寂の中で『レクイエム、エテ~るナム、、、』という導入部から歌い進んで行くうちに、聖歌隊の全員のラテン語に込められた祈りと集中が感じられてきました。まさにバーンスタインの言う「より集中して、より献身的に」という言葉が具現したかのような演奏が進んでいくのです。私はこれほど、鳥肌たつような雰囲気のなかで歌ったことがありません。

そして何故「Agnus Dei」(神の子羊)の中ほどの「Lux aeterna、、」がクレッシェンドしていって(弱音から強奏音へだんだん大きくなること)「quia pius es」の処で最強音にならなければならないのか良く分った気がします。そして二度目の「Requiem、、」の弱音がどれほど大切なものであるか、ということも良く理解出来ました。

そして、「Libera me」の主役はバリトン・ソロの独唱部分ではなくて「Dies illa, Dies irae、、」の最強音のあとにつづくコーラスの「Libera me、、」(我を許したまえ、、)というユニゾーン部の斉唱であったことが凄く納得出来たことです。

また、何故「In Paradisum」(楽園にて)が最後になければならないのかも、実感として分りました。レコードとか演奏会で聴いていただけでは「何でこの楽章が最後に付け加えられてるんだろう」程度の理解だったのですが、歌い進んでくるうちに、ああ死者を送るためにはこの部分が必要だし、最後にもう一度「Requiem~」の弱音で幕を閉じるための導入部としても必要だったんだな、と納得がいったのでありました。

4曲目の「Pie Jesu」(慈悲深いイエスよ)は少年少女コーラスで、10歳前後の子供30人くらいのコーラス。誠にきれいな合唱でした。彼らは全部暗譜しての歌唱。リハーサルの時には惜しみない拍手が聖歌隊全員から贈られました。

教会のパイプオルガンを含めたオーケストラも全員ボランティアの寄せ集めなのですが、それぞれの楽器にはプロかセミプロ級の演奏者が参加していて素晴らしい盛り上がりを見せてくれました。こういうローカルな演奏会にボランティアで馳せ参じる彼らの意気を感じました。20人くらいの小編成ですがハープも含めて必要な楽器は全て網羅されていたのです。

感動的な演奏は指揮者のタクトが降りて静寂の中で終わりました。聖歌隊は楽譜を開いたままフリーズした状態。拍手は無し。演奏する方も聴いている方も皆で祈っているのですから。素晴らしい瞬間でした。おもむろに教会の鐘が「一点鐘」のように間をおいて鳴らされるなかを聖歌隊が静かに入堂と同じように一列に退堂して演奏会は終わりました。私は演奏の途中から鼻水が出てしまってちょっと格好わるかったのですが、何のことはない右も左もそっと鼻水をすする音がして、ああ彼らも同じように感動して歌ってるんだなあ、と分りました。教会の外に出て聴衆が出てくるのを迎えたのですが、皆神妙な面持ちでしかも満ち足りた雰囲気でした。何時もならワイワイガヤガヤとうるさいアメリカ人達ですが、話し声も静か。リッジウッドでも数人の住人がテロの犠牲になっております。そこここで抱き合って泣いている姿がありました。家内が出て来たので一緒に帰りましたが、何時も辛口の批評をのべる彼女も『良かったよ、本当に』と言ってくれました。彼女はピアノ教師なのでオーケストラの連中も良く知った奏者が多くて、かなりレベルの高い人たちだったとのこと。オルガン奏者はまぎれも無くプロフェッショナル。彼女のパイプオルガンの演奏は凄かった。

聖歌隊(言い忘れました、聖歌隊の人数は三~四百人くらい)もオーケストラもそのまま三々五々帰宅。皆が「祈り」を心に留めながら帰っていくのです。この終わり方も、いいなあ。私も仲間の聖歌隊員にそれぞれ握手して「じゃ、日曜日にまたな」と言って帰ったのでした。

教会は:West Side Presbyterian Church

住所は:Varian Fry Way 6 South Monroe Street, Ridgewood, New Jersey

我が町リッジウッドでは最強の聖歌隊を擁するプロテスタント教会です。私はカトリック教会なのですが、こと聖歌隊に関してはプロテスタントに負けております。音楽監督の資質で大きく左右されるのがコーラスやオーケストラの宿命です。

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